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レジンクラフトを楽しんでいると、「型から綺麗に外れない」「作業台にレジンがこぼれて固まってしまった」といったトラブルはつきものですよね。これらの問題を解決するため、レジンがくっつかない素材について詳しく知りたいと考えているのではないでしょうか。美しい作品作りは、素材の性質を正しく理解することから始まります。この記事では、レジンクラフトの作業効率を格段に上げる、UVレジンはもちろんエポキシ樹脂にも使えるくっつかない素材の紹介から始めます。さらに、専用品がなくても大丈夫なように、身近なものでレジン型を代用する便利なアイデアや、多くの方が活用しているレジンにクリアファイルがくっつかない科学的な理由についても深掘りします。また、そもそもレジンは何にくっつくのかという基本的な疑問から、レジンがくっつかないようにするにはどうすれば良いかというプロも実践する予防策、例えばレジン作業台の代用となるくっつかないシートの選び方や、シリコンスプレーをレジン型に使う効果的な方法まで具体的に解説。万が一くっついてしまった際の硬化後の剥がし方や、レジンがプラ板にくっつかないといった特定の問題に対する解決策まで、あなたの悩みを解消し、より一層クラフトを楽しめるようになる情報を網羅しています。
- レジンが付着しない素材の種類とその科学的な特性
- 100円ショップのアイテムなどを活用した型の代用アイデア
- 作業中のトラブルを未然に防ぐための具体的な予防策
- 硬化後に固着してしまったレジンの安全な除去方法
知っておきたいレジンくっつかない素材の基本
- エポキシ樹脂でもくっつかない素材とは
- レジン作業台の代用になるシート類
- レジンにクリアファイルがくっつかない仕組み
- 身近なものでできるレジン型の代用アイデア
- 作業を快適にするレジンがくっつかないシート
エポキシ樹脂でもくっつかない素材とは

レジンクラフトでは、紫外線で硬化させるUVレジンと、主剤と硬化剤の2液を混ぜて化学反応で硬化させるエポキシ樹脂が主に使用されます。種類によって特性が異なりますが、幸いなことに、これから紹介する非粘着性の素材は、どちらのタイプのレジンに対しても離型効果を発揮します。これは、接着の原理がレジンの種類ではなく、素材表面の物理的・化学的性質に依存するためです。結論から言うと、レジンは特定のプラスチックやゴム類には化学的に結合しにくく、ほとんど付着しません。これらの素材を熟知すれば、失敗を恐れずに様々な造形に挑戦できます。
代表的な素材の特性を深く理解しておくことで、市販の専用モールド(型)だけでなく、日用品や意外なアイテムをクラフトに活用する応用力が身につきます。
素材名 | 略称 | 特徴と主な用途 | 入手しやすさ・注意点 |
---|---|---|---|
シリコーン(シリコンゴム) | – | 最も代表的で信頼性の高い素材。非常に柔軟で、複雑な形状や繊細なデザインの型でも、硬化した作品を傷つけることなく綺麗に取り出せます。市販のレジン用モールドのほとんどがこの素材です。 | 手芸店や100円ショップで容易に入手可能。ただし、繰り返し使うと微細な傷から劣化し、離型性が落ちることがあるため、消耗品と考えるのが良いでしょう。 |
ポリプロピレン | PP | 比較的硬質で耐熱性のあるプラスチック。クリアファイルやタッパーウェアなどの食品保存容器、ヨーグルトの容器、ペットボトルのキャップなどに広く使用されています。表面張力が低く、レジンを強力に弾きます。 | 日用品として非常に身近。製品に「PP」の刻印があるか確認してください。硬いため、複雑な形状からの取り出しには向きませんが、平たいプレートや単純な形状の型として優秀です。 |
ポリエチレン | PE | ポリプロピレンより柔らかく、しなやかなプラスチック。ポリ袋やラップフィルム、食品容器の蓋、洗剤のボトルなどに使われています。ポリプロピレンと同様、レジンが付着しにくいです。 | こちらも非常に身近な素材。「PE」の刻印を探しましょう。柔らかさを活かして、硬化後に容器を少し歪ませることで作品を取り出しやすい場合があります。 |
ポリアセタール | POM | 高い自己潤滑性と耐摩耗性を持つ高機能なエンジニアリングプラスチック。機械の歯車やファスナーなどに使われます。接着が極めて困難な素材として知られています。 | 一般的な小売店ではあまり見かけません。レジンクラフトで積極的に使う機会は少ないですが、この素材には接着できないという知識は、異素材を組み合わせる際に役立ちます。 |
フッ素樹脂(テフロン™) | PTFEなど | フライパンのコーティングでお馴染みの「テフロン™」に代表される素材。非粘着性が極めて高く、レジンは全くと言っていいほど付着しません。最高の離型性を誇ります。 | 高価であり、シートやテープ状で販売されていますが、一般的ではありません。プロの現場や特殊な造形で使用されることがあります。 |
ポイント:素材表記(リサイクルマーク)を確認しよう
プラスチック製品を型の代用として使う際は、製品の裏側や底面に刻印されているリサイクルマークと素材表記を確認する習慣をつけましょう。「PP」や「PE」と書かれていれば、レジン型として使える可能性が非常に高いです。これは、プラスチック資源循環推進協会が定める識別表示マークで、信頼できる指標となります。
レジン作業台の代用になるシート類

レジンクラフトを行う際、作業台の保護は絶対に欠かせない準備です。未硬化のレジン液がこぼれて硬化してしまうと、粘着性が高く、取り除くのが非常に困難になります。特に木製のテーブルや塗装された家具の場合、無理に剥がそうとすると表面ごと傷つけてしまう可能性があります。しかし、高価な専用マットをすぐに用意しなくても、身近にあるシート類で十分かつ安全に作業スペースを確保できます。
最も手軽でコストパフォーマンスに優れるのが、ポリプロピレン(PP)製のクリアファイルです。前述の通り、クリアファイルはレジンを強力に弾く性質があるため、万が一レジンがこぼれて硬化しても、指で軽く押すだけで「ペリッ」と綺麗に剥がせます。カッターで切り開いてA3サイズ相当の大きなシートとして使ったり、小さなアクセサリーを作る際の空枠の下敷きにしたりと、その汎用性は計り知れません。
その他、以下のようなアイテムも作業台の保護に非常に役立ちます。
シリコン製のキッチンマット(クッキングマット)
お菓子作りやパン作りで生地をこねる際に使われるシリコンマットは、耐熱性があり、表面が滑らかでレジンが付着しないため、レジンクラフトの作業シートとして理想的です。サイズも大きく、広範囲を一度にカバーできる上、適度な重さと柔軟性があるため作業中にズレにくいのが利点です。100円ショップなどでも様々なサイズが手軽に入手できるのも嬉しいポイントです。
クッキングシート(オーブンシート)
クッキングシートの表面はシリコン樹脂でコーティングされていることが多く、レジンが付着しにくい性質を持っています。必要な分だけカットして使える手軽さが魅力です。ただし、製品によってはコーティングが薄かったり、紙の繊維が粗かったりして、レジン液がわずかに染み込んでしまう可能性もゼロではありません。厚手のものを選ぶか、あくまで一時的な使用、あるいはクリアファイルの下にさらに敷くなどの二重保護策として使うのが良いでしょう。
注意点:新聞紙やコピー用紙は絶対NG
コストを抑えようと新聞紙や普通の紙を作業シートに使うのは絶対に避けてください。これらの素材は吸収性が高いため、レジン液が繊維の奥まで染み込んでしまいます。結果として、紙ごと作業台に強力に接着されてしまい、保護するどころか、より厄介な状況を引き起こす原因となります。
レジンにクリアファイルがくっつかない仕組み

多くの方が経験的に「クリアファイルはレジンにくっつかない」という事実を知っていますが、その科学的な理由を理解すると、他の素材を「これは使えるか?」と判断する際の強力なヒントになります。クリアファイルの主な素材であるポリプロピレン(PP)がレジンを弾く根本的な理由は、物理化学の言葉で言うと「表面エネルギーが極めて低い」という特性にあります。
少し専門的になりますが、あらゆる物質の表面には、分子同士が引き合う力(分子間力)に由来する「表面張力」のようなエネルギーが働いており、これを表面エネルギーと呼びます。液体が固体に付着するかどうか、つまり「濡れる」か「弾かれる」かは、この液体と固体の表面エネルギーのバランスで決まります。
- 表面エネルギーが高い素材(金属、ガラス、陶器など):表面の分子が液体分子を強く引きつけようとするため、液体は表面に広がりやすく、濡れやすい状態になります。これが「接着しやすい」状態の基本です。
- 表面エネルギーが低い素材(PP、PE、フッ素樹脂など):表面の分子が液体分子を引きつける力が弱いため、液体は自身の表面張力でまとまろうとし、弾かれて水滴のような状態になります。これが「接着しにくい」状態です。
レジン液も液体ですので、表面エネルギーが極端に低いポリプロピレンの上では、弾かれて玉のような状態を保とうとします。そのため、硬化しても素材表面に分子レベルでしっかりと密着することができず、結果として何の抵抗もなく簡単に剥がすことができるのです。この原理は、撥水加工されたレインウェアの表面で雨水がコロコロと転がり落ちる現象と全く同じです。
豆知識:分子の極性という観点
この現象を化学的な側面から見ると、「分子の極性」が関係しています。ポリプロピレンやポリエチレンは、分子内の電気的な偏りがない「非極性分子」から構成されています。一方で、多くの接着剤やレジンは、分子内に電気的なプラスとマイナスの偏りがある「極性分子」を持っています。接着とは、この極性分子同士が磁石のN極とS極のように静電気的に引き合うことで強固な結合が生まれる現象です。非極性の素材には、この結合の「取っ掛かり」となる電気的な偏りがないため、接着が非常に難しいのです。
身近なものでできるレジン型の代用アイデア

専用のシリコンモールドはデザイン性が高く魅力的ですが、「この形を一度だけ試したい」「オリジナルの形状を作りたい」といった場合に、わざわざ購入するのはためらわれることもあります。しかし、心配は無用です。私たちのキッチンや文房具入れの中には、レジン型の代用品として驚くほど優秀なアイテムが隠れています。
ここでの成功の鍵は、これまで述べてきた「レジンがくっつかない素材(シリコーン、PP、PE)」でできているかをしっかりと確認することです。
お菓子作りや製氷用のシリコン型
100円ショップや雑貨店、スーパーマーケットで手に入る、チョコレートやグミ、氷を作るためのシリコン型は、レジン用モールドとしてそのまま転用できます。ハートや星といった定番の形から、動物やキャラクター、宝石のような凝ったデザインまで多種多様です。食品用シリコーンは安全基準が厳しく、耐熱性も高いため、エンボスヒーターで気泡を抜く作業をしても変形する心配がなく、安心して使えます。これが最も手軽で失敗のない代用方法と言えるでしょう。
プラスチック製の容器やケース
小物入れやビーズケース、食品保存容器(タッパーウェア)の蓋など、素材表記に「PP(ポリプロピレン)」や「PE(ポリエチレン)」と書かれているものは、立派な型の代わりになります。例えば、四角い収納ケースを使えばシンプルなスクエア型のプレートが作れますし、化粧品サンプルの小さなクリーム容器などもミニチュアパーツの型として活用できます。特に、半透明や透明なものであればUVライトが内部まで透過しやすいため、UVレジンを使用する際に硬化不良を起こしにくく、非常に便利です。
「おゆまる」などの熱可塑性プラスチック粘土
80℃程度のお湯に入れると柔らかくなり、冷めるとゴムのように固まるプラスチック粘土「おゆまる」は、自分だけのオリジナルモールドを自作するのに最適な素材です。市販のチャームやボタン、貝殻や植物などの自然物といった、お気に入りの立体物を押し付けて型取りし、そこにレジンを流し込むことで、精巧な複製パーツを簡単に作成できます。最大の魅力は、失敗しても再びお湯につければ何度でもやり直せる手軽さです。コストを気にせず、気軽に型作りに挑戦できます。
おゆまるで型を作る際は、原型となるものにワセリンを薄く塗っておくと、よりスムーズに原型を取り外すことができますよ。粘土遊びの感覚で、世界に一つだけのオリジナルモールド作りにぜひ挑戦してみてください。
作業を快適にするレジンがくっつかないシート

前述の通り、作業台の保護という目的だけであれば、クリアファイルやシリコン製のキッチンマットで十分に代用が可能です。しかし、より快適に、そして本格的にレジンクラフトの世界を追求したいのであれば、専用に設計されたクラフト用シートの導入を検討する価値は十分にあります。
レジンクラフト専用のシリコンマットは、単にレジンが付着しないという基本的な機能に加え、アーティストの作業効率と精度を格段に向上させるための様々な工夫が凝らされている点が最大の違いです。例えば、多くの専用マットには、表面に1cm方眼や5mm方眼のグリッド、あるいは同心円や角度を示すガイドラインが印刷されています。これにより、パーツのサイズを正確に測ったり、複数のパーツを左右対称に配置したり、直線をまっすぐに引いたりする作業がフリーハンドに比べて格段に容易になります。
また、シートの縁にレジン液を混ぜるためのパレットとして使える小さなくぼみが複数付いている製品も人気です。着色剤を混ぜて複数の色のレジン液を作る際に、このくぼみを使えば別途パレットを用意する必要がありません。作業後に硬化したレジンは跡形もなく綺麗に剥がせるため、後片付けの手間も大幅に削減できます。
クリアファイルでも機能的には十分ですが、何度も繰り返し使用できる高い耐久性や、作業中にズレにくい適度な重量と滑り止め効果、そして何より作業を直感的にサポートしてくれる付加機能を考慮すると、専用シートへの投資は「時間の節約」と「作品のクオリティ向上」に直結すると言えるでしょう。これから本格的にレジンクラフトを始めたい方、あるいは現在の作業環境をワンランクアップさせたいと考えている方には、特におすすめしたいアイテムです。
レジンがくっつかない素材の活用法と注意点
- そもそもレジンは何にくっつくのか解説
- レジンがくっつかないようにするには?
- 型にはシリコンスプレーでレジン対策を
- 硬化後に困らないレジンの剥がし方
- レジンがプラ板にくっつかない場合の対処法
- 総まとめ:最適なレジンくっつかない素材とは
そもそもレジンは何にくっつくのか解説

レジンが「くっつかない素材」をマスターする一方で、その逆、つまり「よくくっつく素材」の特性を深く理解することは、作品作りの表現の幅を広げる上で非常に重要です。レジンは基本的に、表面に微細な凹凸(ミクロな凹凸)がある素材や、液体が内部に染み込みやすい多孔質な素材と非常に相性が良く、物理的にがっちりと食いつくことで強力に接着します。
具体的には、以下のような素材が挙げられ、それぞれ接着のメカニズムが少し異なります。
接着のメカニズム
アンカー効果(投錨効果)
木材、紙、布、素焼きの陶器など、繊維質で多孔質な素材に対しては、液体状のレジンが素材の微細な隙間や繊維の奥深くに浸透します。その後、レジンが硬化することで、内部で無数の小さな錨(いかり)が下ろされたような状態になり、物理的に強力な結合が生まれます。これがアンカー効果です。
物理的な結合
金属類やガラスなど、一見すると平滑な素材でも、ミクロのレベルでは凹凸があります。ヤスリなどで表面に意図的に細かい傷(これを「足付け」と呼びます)をつけることで、その凹凸にレジンが入り込み、硬化することでがっちりと食いつきます。これにより接着力が飛躍的に向上します。
逆に、ガラスやアクリル板、表面がツルツルに釉薬でコーティングされた陶器など、極めて平滑で非多孔質な素材には、上記のメカニズムが働きにくいため、比較的くっつきにくい傾向があります。接着しているように見えても、界面(接触面)で結合している力が弱いため、わずかな衝撃や温度変化による収縮・膨張で「ポロッ」と剥がれてしまうことがあるため、これらの素材を土台にする場合は注意が必要です。
レジンがくっつかないようにするには?

意図しない場所にレジンが付着するという失敗は、時として作品そのものを台無しにしてしまいます。こうした事故を防ぐためには、作業を始める前の「段取り」が何よりも大切です。主な対策は「作業環境の物理的な保護」と「型への化学的な対策」の二つに大別できます。
第一に、作業環境の物理的な保護です。これはこれまでにも述べてきた通り、作業台にシリコンマットや開いたクリアファイルなどを敷くことで対策します。レジン液は粘度があるため、一度こぼれると思った以上に広がりやすい性質を持っています。作業スペースは常に余裕を持ち、自分が思っているよりも少し広い範囲を保護シートで覆っておくことが、心の余裕にも繋がります。また、手や衣服への付着を防ぐため、ニトリル製などの使い捨て手袋やエプロンの着用も習慣づけましょう。
第二に、型への化学的な対策です。お気に入りのシリコン製の型でも、何度も繰り返し使用していると、レジンの硬化熱や化学成分によって表面が微細に劣化し、新品の頃のような離型性が失われてくることがあります。また、ポリプロピレン(PP)製の自作型など、少しでも付着が心配な素材を使用する際には、あらかじめ「離型剤」を内側に塗布しておくのが最も確実な予防策となります。この一手間が、大切な型を長持ちさせ、作品の取り出し失敗という悲劇を防ぎます。
離型剤(りけいざい)とは?
離型剤は、文字通り「型から離す」ことを助ける薬剤です。その役割は、型とレジンの間に人間には見えないレベルの微細な油膜のようなバリア層を形成し、両者が直接接触するのを防ぐことです。これにより、硬化後の物理的な食いつきや化学的な結合を阻害し、驚くほどスムーズな取り外しを実現します。プロの製造現場では必須のアイテムです。
型にはシリコンスプレーでレジン対策を

レジンクラフトで使われる離型剤として、最も一般的で効果が高く、入手しやすいのがシリコンスプレーです。これは、潤滑性や非粘着性に優れたシリコーンオイルを主成分とし、噴射剤でエアゾール化した製品です。型の内側に薄く吹き付けるだけで、均一なシリコーン被膜を形成し、優れた離型効果を発揮します。
使い方は非常に簡単ですが、効果を最大限に引き出すためにはいくつかのコツがあります。
- 換気を行う:まず、窓を開けるなどして作業場所の換気を良くします。
- 距離を保ってスプレー:型から20〜30cmほど離した位置から、型の内側全体に「サッ」と軽く、均一に吹き付けます。一箇所に集中して噴射しないように注意してください。
- 乾燥させる:スプレー後、数分間放置して噴射剤を揮発させ、シリコーン被膜を定着させます。
- 軽く拭き取る(任意):もしスプレーしすぎて液だまりができた場合は、糸くずの出ない柔らかい布やティッシュで軽く押さえるようにして余分なオイルを吸い取ります。
最も重要なのは、スプレーしすぎないことです。過剰なオイルはレジン液と混ざってしまい、作品の表面が油っぽく曇ったり、細かな気泡が抜けにくくなったり、硬化不良の原因になることがあります。あくまで「ごく薄い膜を作る」という意識を持つのが成功のコツです。シリコンスプレーの安全な使用方法については、KURE(呉工業)などのメーカー公式サイトで詳細な情報が公開されていますので、使用前に一度確認することをおすすめします。
専用離型剤がない場合の代用品
もし専用のシリコンスプレーが手元にない緊急時には、家庭にあるもので代用することも可能です。ただし、これらはあくまで応急処置であり、仕上がりに影響が出る可能性があることを理解しておきましょう。
- ワセリン:保湿クリームとして使われるワセリンは、離型剤として代用できます。指や綿棒にごく少量をとり、型の内側に薄く、そして均一に塗り広げます。塗りムラができやすい点と、塗りすぎると作品の繊細なディテールが甘く(不鮮明に)なってしまう点に注意が必要です。
- 食用油(サラダ油、オリーブオイルなど):ワセリンと同様に薄く塗って使用できますが、植物性の油は時間と共に酸化して劣化し、ベタつきや特有の臭いを発する原因となる可能性があります。長期保管する作品にはあまり向いていません。
代用品も知っておくと便利ですが、やはり専用のシリコンスプレーが最も安定した効果と美しい仕上がりをもたらしてくれます。価格も数百円からと手頃なものが多いので、レジンクラフトを長く楽しむなら、ぜひ専用品を一本常備しておくことを強くおすすめします。
硬化後に困らないレジンの剥がし方

どんなに細心の注意を払っていても、不意にレジン液がこぼれたり、型からはみ出したりして、意図しない場所で硬化してしまうことは誰にでも起こり得ます。そんな時に慌てないよう、状況に応じた対処法を知っておきましょう。ただし、これから紹介する方法は、対象の素材を傷めてしまうリスクを伴う場合があるため、作業は自己責任で、目立たない場所で試してから慎重に行ってください。
方法1:温めて物理的に剥がす
多くのレジン(特にUVレジン)は熱可塑性を持っており、熱を加えることで一時的にゴムのように柔らかくなる性質があります。この性質を利用し、ドライヤーやエンボスヒーターで硬化したレジンをじっくりと温めます。レジンが少し柔らかくなり、弾力が出てきたタイミングで、プラスチック製のヘラやカッターの背などを隙間に差し込み、慎重に剥がしていきます。
注意:火傷と素材の変形・損傷
エンボスヒーターは高温になるため、火傷には最大限の注意が必要です。また、熱に弱いプラスチック素材や塗装面は、温めすぎると変形したり、塗装が溶けたりする可能性があります。対象の素材の耐熱性を確認し、様子を見ながら少しずつ、かつ一点に集中させすぎないように温めるのが重要です。
方法2:道具を使って機械的に剥がす
薄く硬化したレジンの場合、道具を使って物理的に削り取る方法があります。プラスチック製のスクレーパー(ヘラ)や、不要になったプラスチック製のカード(ポイントカードなど)を使い、素材を傷つけないように注意しながら、端から少しずつ優しく削るように剥がします。金属製のヘラやカッターの刃を立てると、対象物を深く傷つけてしまう可能性が高いため、できるだけ避けた方が無難です。
方法3:溶剤を使って化学的に溶かす・膨潤させる
物理的な方法でどうしても剥がれない場合の最終手段が、溶剤を使用する方法です。レジンを化学的に分解したり、柔らかく(膨潤させたり)する効果のある液体を使います。
- アセトン:マニキュアの除光液の主成分として知られ、レジンを強力に溶かす効果があります。コットンやティッシュにアセトンを染み込ませ、剥がしたいレジンの上にしばらく置いてラップで覆い、蒸発を防ぎます。数分〜数十分後、レジンがゼリー状に柔らかくなったところを拭き取ります。
- 無水エタノール(IPAも可):アセトンほど強力ではありませんが、レジンを柔らかくする(膨潤させる)効果があります。アセトンが使えないデリケートな素材に対して、より穏やかに作用させたい場合に使用します。
【最重要】溶剤使用の健康および物的リスク
アセトンなどの強力な有機溶剤は、多くのプラスチック(ABS樹脂、ポリスチレンなど)や塗装面を一緒に溶かしてしまうという重大なリスクがあります。また、引火性が非常に高く、その蒸気は有毒で、吸入すると健康に害を及ぼすため、使用する際は必ず以下の点を厳守してください。
1. 十分な換気(窓を2箇所以上開けるなど)を行う。
2. 火の気のない場所で使用する。
3. 保護手袋、保護メガネを着用する。
4. 使用前に必ず目立たない場所でテストを行う。
これらの化学物質の取り扱いに関する注意点は、厚生労働省 職場のあんぜんサイトも注意喚起を行っています。安全を最優先し、自己責任で慎重に使用してください。
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レジンがプラ板にくっつかない場合の対処法

オーブントースターで熱して縮ませて作るプラ板(ポリスチレン製)のアクセサリーは、レジンクラフトとの相性も良く人気ですが、完成したプラ板パーツにレジンで作ったチャームを接着しようとした際に、簡単に取れてしまって困ったという経験はありませんか?実は、熱で縮んだ後のプラ板は、表面が非常に硬くツルツルしているため、レジンが「くっつきにくい」素材の一つに分類されます。レジン液を接着剤代わりに使って硬化させても、界面での物理的な食いつきが弱く、衝撃が加わると簡単に剥離してしまいます。
プラ板とレジンパーツを長期間、強力に接着したい場合は、レジン液の接着力だけに頼るのではなく、衝撃や温度変化に強い、異種材料用の「多用途弾性接着剤」を正しく併用するのが最も確実でプロフェッショナルな方法です。
推奨される異種材料の接着手順(プラ板とレジン)
- 下地処理(足付け):まず、プラ板とレジンパーツのそれぞれの接着面に、紙ヤスリ(400番〜600番程度)を軽くかけて、表面に微細な傷をつけます。これにより接着面積が物理的に増大し、接着剤が食いつく「アンカー」ができます。これが「足付け」と呼ばれる最も重要な工程です。
- 脱脂・清掃:次に、両方の接着面に付着している手の油分や削りカスを、無水エタノールなどを染み込ませた布で丁寧に拭き取ります。油分は接着力を著しく低下させるため、この脱脂工程も非常に重要です。拭き取った後は、溶剤が完全に揮発するまで待ちます。
- 弾性接着剤の塗布:「セメダイン スーパーXG」や「コニシ ウルトラ多用途SU」のような、透明で衝撃吸収性に優れた弾性接着剤を、接着面の片方に少量(米粒半分程度から)塗布し、パーツを正確に貼り合わせます。これらの接着剤は、硬化後もカチカチにならず、ゴムのような弾性を保つため、素材の膨張・収縮の違いや衝撃を吸収し、剥がれを防ぎます。
- 固定・硬化:パーツがずれないようにマスキングテープなどで軽く固定し、接着剤のパッケージに記載されている時間(通常24時間程度で完全硬化)だけ、静かに放置します。
- レジンによる補強(任意):接着剤が完全に硬化した後、強度をさらに高めるためや、デザイン上の一体感を出す目的で、パーツの接合部の周囲をレジンで薄くコーティングします。
このように、「接着は専門の接着剤、補強やデザインはレジン」と、それぞれの素材の得意な役割を分担させてあげることで、市販品のような耐久性の高い、高品質な作品を作ることができます。
総まとめ:レジンがくっつかない最適な素材とは

この記事では、レジンクラフトにおける永遠のテーマである「接着」について、くっつかない素材の選び方から、トラブルの予防策、そして万が一の対処法まで、科学的な視点も交えながら網羅的に解説しました。最後に、快適な作品作りを成功させるための重要なポイントを改めてまとめます。
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